目次
PoC(概念実証)とは?
PoC(ピーオーシー)とは「Proof of Concept」の略で、日本語では「概念実証」と訳されます。新しい概念やアイデア、理論が実際に機能するかどうかを、小規模・限定的なスケールで検証する工程を指します。たとえば、新しい業務システムを導入しようとする場合に、そのシステムが実際の業務フローに適合するのか、業務効率は本当に改善されるのか、といった点を事前に検証するためにPoCが行われます。
PoCは、聞いたことはあるものの「実際には何をするのか?」「なぜ必要なのか?」が明確でない方も多いのではないでしょうか。各企業が進めるDX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させるためにも重要な要素の1つです。本記事では、PoCの基本から、システム導入時にPoCを実施するメリット、PoCでシステム導入を推進した企業の成功事例までをわかりやすく解説します。
PoCとDXの関係
DXとは単なるIT化ではなく、デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを抜本的に変革する取り組みを指します。デジタル技術を取り入れるをために、新たなシステムの導入を行われることが多いですが、企業におけるシステム導入はコストも時間もかかる大きな投資です。しかし、導入後に「思っていたのと違った」「現場では使いづらい」といった理由で定着しないケースも少なくありません。PoCはこうした失敗リスクを未然に防ぐためのステップとして注目されています。PoCを通じて、企業は新たな技術やシステムが本当に自社にフィットするかを事前に検証することができ、DXの成功確率を高めることが可能になります。
PoCの全体像
システム導入におけるPoC(概念実証)は、導入前にその技術や仕組みが本当に自社の課題解決に役立つかどうかを、小規模に試すプロセスです。下図は、そのPoCの基本ステップと意思決定までの流れを示したものです。

検証プロセスの重要なポイントは以下の4点が挙げられます。
明確な目的(ゴール)と評価基準を設定する
「なぜPoCを実施するのか」「PoCでどのようなデータを得たいのか」「どのような効果を期待するのか」など、細かく決めていく必要があります。たとえば、紙帳票の運用が課題となっている場合、「帳票業務にかかる時間を○%削減する」「ファイリングや承認作業などの人件費を○万円削減する」など、具体的な数値があれば評価を行う際のわかりやすい基準となるため、円滑な意思決定や判断に役立ちます。PoCの成果を正しく判断するためには「何を検証したいのか」を明確にすることが不可欠です。技術的な要件だけでなく、業務改善の観点やコスト削減効果なども含めて、評価軸をPoCの計画を設計する際に定義しておきましょう。
検証すべき部分をフォーカスする
PoCは限られた時間とリソースで行うものです。すべての機能を試そうとせず、自社の中で重要な機能、構成をメインに検証することで、短期間でも有益な検証結果を得ることができます。特に課題となっている部分にフォーカスを当てて検証を行いましょう。コロナ禍以降、システムの機能を詳しく知ることができる、eラーニングやWEBマニュアルを閲覧できることも多くなっているので、事前にどの機能を試すべきかの情報収集を行うことも有用です。
実業務に近い環境で実施する
PoCでは、実際の業務データや運用環境にできるだけ近い状況でテストを行うことが重要です。机上のテストでは見えない課題が見つかりやすくなります。推進者だけではなく、実際にソフトウェアを利用するユーザー側でもテストを行い、問題点を洗い出します。
フィードバックと改善を重視する
PoCの結果は、成功・失敗を判断するだけでなく、改善のヒントを得る機会でもあります。関係者からのフィードバックをもとに改善案を整理し、次のステップに反映しましょう。実際の利用者からのフィードバックから改善を行うことで、定着化にもつながります。最後のステップまで進んだら、検証結果を踏まえてPoCを通じて得られた成果や課題を総合的に判断し、本格導入に進めるかどうかの意思決定を行います。
仮に期待された効果が得られなかった場合でも、その過程で得た知見は次の改善に活かすことができます。このように、PoCは「やって終わり」ではなく、「システム導入を成功させるための準備」として、重要な役割を果たします。
システム導入におけるPoCのメリット
企業内のDX推進を成功に導くPoCには、どのようなメリットがあるのかを解説いたします。
現場の理解と協力が得やすくなる
新システムの導入には、現場担当者や管理職など、さまざまな関係者との理解と協力が不可欠です。PoCによって自社での活用がより具体化され、納得感を得やすくなり、導入から定着までスムーズにすすめることにつながります。
投資判断の材料になる
PoCの結果をもとに、ROI(投資対効果)を見積もることで、導入に値するかどうかの判断材料になります。「時間を○%削減する」「人件費を○万円削減する」など、具体的な数値があれば評価を行う際のわかりやすい基準を設定しておくと、社内関係者への説得材料としても有効です。
導入後のギャップを最小化
PoCで課題を洗い出しておくことで、本導入後の「想定と違った」というギャップを減らすことができます。事前に現場からのフィードバックと改善を考慮して導入を行うことで、運用定着率の向上や、導入後の手戻りコストの削減にもつながります。
システム導入でPoCを活用した事例
実際に、システム導入でPoCを行い、スムーズな導入を成功させた事例をご紹介いたします。現場帳票電子化ソリューション「XC-Gate(エクシーゲート)」を用いて、帳票業務の効率化を成功された事例です。
高松帝酸株式会社様
現場帳票電子化ソリューション「XC-Gate」を展開するにあたり、PoCを用いて着実に導入を進められまています。社内の一部門でガス検査記録、分析表の作成、日常点検などの帳票電子化を行い、他の部署でのデジタル化解決を進められている事例です。
『XC-Gate導入事例』高松帝酸株式会社
高松帝酸株式会社は昭和25年創業、高圧ガスの製造・販売を行う企業である。四国内に13拠点あり、そのネットワークを生かして、様々な医療や産業に関するお客様にサービスを提供している。高圧ガスだけではなく、各種機材、資材など幅広い取り扱いが特徴で、お客様へ最適なプランを提案することを使命としている。同社では、ガスの検査記録や分析表、日常点検といった書類作成業務に時間・手間・場所が奪われており、これらの課題を解決するにはデジタル化の推進が必須であると考え、タブレットとXC-Gate.ENT(エクシーゲート エント)を導入した。
現場帳票システム「XC-Gate」を導入して業務改善に成功したお客様の導入事例を、わかりやすくまとめた資料もご用意しております。ぜひ同じ業種の事例資料をダウンロードして参考にしてみてください。
まとめ
PoCは、単に「お試しでやってみる」ものではなく、システム導入を成功させるための戦略的プロセスです。しっかりと目的を持ち、実行と振り返りを丁寧に行うことで、失敗を回避しながら最適な選択肢を見つけ出すことができます。
DX推進において、新技術やシステムの導入はチャレンジングな試みとなります。新しい取り組みに踏み出す際は、まずPoCを通じて未来の可能性を“見える化”してみてはいかがでしょうか。
コメントを残す